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遠い人の懸念の聲を聴くような受け身で湯船の中長い間言葉を辿る。

言葉を連ねる自由の精神になかなか入り込めないのは、些末な悉の対処が終わっていないからだと判っているが、それでもふとぽっかり空いた隙間でぼんやりとした入り口のようなものを幻視したいと何度か弱く望んではみたものの、想定のモノどもはまだ何も語り始めない。このところ少々苛立って風呂桶蓋の上に乱雑に脈絡なく重ねたものが水を含んで膨れている。

あるいは欲望の制御には充分な睡眠が必要だったとわざわざふたつに分けて合計八時間眠り込み、目覚めの喪失感に漲る「はじまり」にこそ降ってくるものがあると知り得る感覚の中、水気の含まれた他者の困惑が重なり、再び風呂を沸かすのだった。

到頭今更宣言地味たことに嫌気も差し、「何もしない」という堕落を愉悦には転化できないわけだから、ふと抱えた数多繰り返されている「恋愛」について考えてみるが、頓着を棄てる青さがそこになければならないと失笑する。