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仕方ないと諦めた風な声が耳元に残って目覚めると雨音が部屋に忍んでいる。

新緑を浴びる時間もなかった庭のいきなり膨れて垂れ下がったような濡れた緑色を眺め食事をつくる。実家の母親に頼んで押し入れに仕舞ってあったシーツをいくつか貰ったのでこれでなんとかできると意気込んだ途端に気象は崩れ始めた。並べ置いて次々に川面に流すかの仕事が重なり文字を辿る力も崩れに影響されたか萎えたようで湯槽の中では蓋の上に開いた本を突っ伏して瞼を閉じ耳を澄ますだけの時の過ごし方をしていると気づく。始末をあれこれ転がしたので夜中の重力で打ち込まれた気概が挫かれたかと危ぶんだけれども辺りは冬のそれと違った絶えず癒されるような静まりがあり妙な不安は掻き消えた。