お盆の朝大池の脇の路上に雉の骸が転がっていた。おそらく車。

盆明けからはじまった改修工事で風呂の使えない母親を山に連れ上り、ダイニングテーブルを囲んだ夕食を二夜続け、二晩目には帰省中の姪っ子大学生のちーちゃんも市街地の残暑から避難させて一緒に奇妙な三人家族の夕食を摂る。チキンと野菜のホワイトシチューとサラダをこしらえ送ってしまった父親の仏壇脇の果物も熟しすぎたようだったのでデザートにしてメロンマンゴーパイナップルと平らげる。

高原では朝夕めっきり気温が下がり日中は流石に夏の日差しは強いけれども吹き下ろすような風は爽やかであたりを徘徊する避暑の人々の姿もまだ多い。家族の新盆などの用事と私事のプロジェクトも区切りがついてデスクワークの請負業務に移行したけれども途端にふいに昼夜構わず躯から意識が抜けてしまうような鋭い睡魔が襲うので堪えることもせずそのまま突っ伏す。一年前を振り返りこのフロアに座り込んで段ボールに手を入れて整理などできるのだろうかと途方に暮れていた記述を辿ると現在の心地が摩訶不思議な立ち位置となって認識され、いつまでたっても何も見えぬまま勘のようなものを頼りに向こうを見やるような恥じていたかもしれない愚鈍を抱き寄せるようになったのはいつ頃からか。小さな落ち着きのような古着を繰り返して羽織るような感覚として心地よい。

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