朝比奈氏の個展最終日だと気づき慌てた風に駆け込みおやっと無地の磁器を購入。

絵付け手法も切り詰められておりさてはこの冬を同じ環境で過ごしたせいかと勝手に妄想する。コントラストの強い鑑賞用ともいえる絵皿に配置する料理を考えると困ってしまうほうだから引っ越しの際にそろえたものは皆白い無地の食器であったが、絵皿が気に入らないというわけではない。結婚する前に妻の勤めていた開発室から皿のデザインを依頼されたことがあり、当時まだ二十代の頃やはり私もウサギをモチーフにしていたことを憶いだした。

大池をすぎた辺りの下り坂で横から飛び出したハクビシンに急ブレーキを踏み込みあわやタイヤでつぶしたかと驚いたが、すばしこい獣は音速で逃げ去っておりほっとしていた。

作家の撓んだこんなになってしまったという具合の皿を助手席に置き帰り道のスーパーでこの皿に乗せる食材を選ぶのがこれまた嬉しい。幾度も繰り返されるだろう食事の度に朝比奈氏の指先がほんのり浮かぶという反復の静けさもまたよろしい。