朝方の複雑な夢の中で思いがけない事ごとがあっさりヘビーに展開して目覚めた時は少々はらはらしたものだったが、窓の外の明るさがなーんちゃってという感じに晴れ上がって膨れた剣呑をこれもまたあっさり溶かした。

午前中に洗濯やら掃除やら家事をしていると母親から降りてきなさいと電話がありこちらも下に用事があったのでふたつ返事で車に乗り込んだ。横浜での姪の入学式に付き添って出向いた話を聞きながら煮物を昼飯に喰ってから葉書の宛名をどうしてもプリンターで印字したいという衒いを黙って引き受けて作業したのはこちらも郵便局に用事があったからだった。週に一度洗車するほどの立場でないと思うより街は陽気のせいか休日のせいか、どこも酷く混雑しており、スタンドのセルフ洗車に車が列をつくっている。スーパーや道の音響も360度奇妙奇天烈な音場が幾層にも重なりまともに耳を澄ませるとこれは狂うぞ。

母親の庭いじりの腐葉土を80リットル買って車に積み、私も嵐で裂けたバイクシートを購入したが素材が薄くて失敗。水村美苗の読売連載「母の遺産―新聞小説」を横浜で妹に買ってもらった母親は贔屓の作家作品を独りの夜寂しさを紛らわして読むのが嬉しいともらした。読み終えたら貸すねと言われる。ちらっと捲るとなるほど新聞連載を大いに意識した断章のつづれ織りとなっている模様。

下りの大池で停車し池の端を歩くと向こう岸から子供たちの歓声が小さく時々風に消されるように届くので目を凝らすと、高原センターの催しか知らないが、建物から池に向かって下るまだ雪の残る斜面を小さなさまざまな色彩の子供粒が多分橇にのって飛び跳ねて遊んでいるのがみえる。間伐の隙間から東側に別の池があったのかと初めて知り、道を探すが車で入る道はなかったのが嬉しい。樹影を残雪に長く伸ばす高原の小さな谷や丘を車窓に感じつつこの光景のために聴く音というのはあるなとハンドルを握った。