母親の大腸内視鏡検査があり、昼過ぎに市民病院へ連れていく。昨日から食事をせずに朝から2リットルの下剤で腹を空にし、父親の連日の見舞いと、ばらついた食事などによったか、痩せたねと指摘すると、家族は皆痩せたわ。と呟いた。3ミリの良性ポリープがみつかったが、一年後にも一度検査して、大きくなっていたら取りましょうという医師の言葉に対して、またこんなことと思わず口に出たらしい。
今夜は何を食べてもいいですよと云われた母親を少々我慢させて家で休ませ、そのまま父親の病室へ汚れ物を受け取りに回ると、腹から二本出ていた膵液などに血液が混じっていないかを調べるための術後経過確認の管がひとつ取れた。が、ちっと舌打ちして痛かったともらした。医師からVサインをされてなにかと尋ねたら、入院から二週間すぎましたということで、こちらとしてもややこしいと苦笑いをし、相部屋の騒々しい非日常の空間で時間を持て余している父親に、せめて、家の片付けの状況を説明して、退院の時を楽しみにさせようとしたが、おそらくいまこの時の辛さというのは、息子にも伝えることは出来ないと噛み締めてそれ以上の愚痴を閉じたようだった。抜糸がはやかったか、傷口から血などが流れ、再縫合するなどあって、食欲もなかな戻らず、腕、足等は痩せたままだが表情は見違えるほど元に戻っている。病院から海鮮市場へ回り、一日食事を我慢した母親へ、上等な寿司折を買って戻り、こちらが勝手に立って味噌汁をこしらえて食べさせ、ひとりで山に戻る。
昨日、朝から夕方まで仕事をしていると、この一ヶ月でおそらく5百個の箱を持ち上げ続けた、蟻のようだったこちらの背中の筋肉が音がするように張り、身体のいたる箇所が疼くので、バイクで天狗の湯まで走り、途中閉鎖中のリゾートスキー場を見上げてから、まだ陽のある飯綱、黒姫、妙高の連山が露天からくっきり臨める快晴の下湯にゆっくり浸かり、普段使ったことのない有料のマッサージチェアに3百円投入し30分間機械マッサージの進化した効果に魂消つつ、これが効くなら何度でもやるさとそのまま広間で親子丼を喰って戻った。翌朝気温が15度ほどに下がり、晩秋の香りの中、白露かと呟いた。