野尻湖、妙高、黒姫は、インフラと積雪その他理由を鑑みて先十年のこちらの未来から削除し、梅雨時の奇跡的な晴れ間、約束の日、首にULTRON+1DsMarkIIIをぶら下げバイクに股がって追分まで走る。途中上田マックにて珈琲。遠い記憶がいくつもよみがえる。午前中に物件をふたつ担当のサイキさんに案内していただき、そのうちのひとつが悪くないものであったので、本来は休日なのにわざわざオープンしてくれた春やに乗り付け、これに決めようかとおもってますと、オーナーのミツイさんに勇んで報告すると、慌てるな決めるのはまだ早い。と諭される。春やアートスペースにて開催されている、びわくんと奥さんの愛情展をみて、びわくんがデビルマンとなったような輝く新作に魂消る。作品の価格設定や今回の新作が、作家自身のカラダをモリモリ打ち破って、より強靭な獣になっていく底意地を感じ、個人的にはなんだか嬉しかった。

ミツイさんのおいしいランチセット(スープ、サラダ、サンドイッチ)をいただきながら、軽井沢の様子を聞く。びわくんもきてくれたので、成り行きで、午後3時から別約束していた中古別荘軽井沢ツアーにおふたりが同行してもらえることとなり、三人でお店を閉めて、バイクを置き、ミツイさんの車にて待ち合わせの駅前まで運んでいただく。こちらはお供をつれた桃太郎の気分となり(実際はびわくんとこちらが猿か雉で、ミツイさんが桃太郎だったといっていい)、鬱蒼とした中軽井沢の奥地から、訳あり物件(斜め前がお墓、後ろが資材置き場)の様子を確認し、つづけて確かに植生の異なる広葉樹の中に広がる追分の新しい別荘地を巡り(ここは美しいがJinの仕事場兼自宅の近くというのがちとあまりにw)、ハセガワさん案内の車内で盛り上がった「女街道(おとめかいどうとも呼ぶらしい)」物件を、夕刻の逆光の中見上げた。都度鋭いツッコミのミツイさんに、こちらは弱くボケルしかなかったが、丸紅がまるごと一山開発した別荘地の最後の物件で、これがいいなと、一度はあれやこれやで混乱気味の気持ちをまっすぐに物件に向けていた。

3時間以上のツアーを終えて、お二人に御礼をいってまだ空に残光が残る黄昏の中、手をふって軽井沢を後にした。30km/1l燃費にて快調なツーリングは、帰りの上山田を越えたあたりで、流石にカメラが首、肩の負担となったか疲労感が吹き出る。昼すぎには御代田のjinも誘ったが、肩をやられたよ。電話口でカラダの不調と仕事もあって本日の合流は見送っていた男の痛みが、ようやくこの時に分かったような気がした。幾度もバイクを転がしながら、コーマック・マッカーシーの馬が浮かび、馬は馬で乗る方はケツが痛かったんだな。などと思った。

翌日、木村さんから紹介していただいた樋口工業へお邪魔し、設計図をみてもらい、構造の想定と実際の差異を確認しひとつは再設計とし、工場で制作中の、木村氏の作品をみせていただく。
そのまま届いたと連絡があったショップへキャリアを取り付けにバイクを走らせてから、家族を引き連れて、飯綱物件の現地案内へと車を走らせた。
環境的には申し分ない。築5年の新築同然の建物は、明るく広く開放的でさまざまな未来の映像が浮かぶ。金額的な遣繰りの問題だけとなり、家族と前向きに考えたいと相談する。

夕方に、3THREEオフィスに、雷族(ゲンタとあたし)がバイクで集合し、こちらの経過報告を兼ねた打ち合わせを行う。業務で疲弊気味な中嶋君によろしく頼みますと頭をさげて、雷族散会。ゲンタのセローは、どうみても族車。土曜日に修理を行うらしい。夜になって養老の瀧にて、イケダ、アオキ、ゲンタと合流。酒はあたしとアオキのみ。薬服用中のイケダは酒断念。ゲンタは車でかけつけてくれたので仕方なし。遅くまで酒盛りミーティング。

翌日早朝に、仕事の時間の空いた妹を誘って再度飯綱物件現地へ。環境音をサンプリング。蜩が鳴く森。ここに立つだけで全てが新しくなる気がする。帰り道、信濃町の美味しい蕎麦屋があると道を教えて貰い、信州霧下そば庵「若月」にて、大天ざるを喰う。素晴らしく旨い。こういう場所が手法を成熟させて生き残ると妹と話す。