点、丸。反復。まるでナイフを使って紙に言葉を刻み込んでいるようだが、例えば、残酷が真綿の上に丁寧に乗せられているので、その言葉を追いかける漂流者は、眼差しの偏見が落ちて、強固な柔らかさというようなやさしい気持ちになる。発声自体の言葉の生成の器(これはそのまま人間の魂に繋がっている)の謎への探索がそのまま創作となる吉増剛造の作品の豊かさに放心する。
「予感と灰の木」/オシリス、石ノ神より
<<明るい部屋はありますか>>
<<明るい部屋はありますか>>
夕暮
解体車は去った
残された前の家、撒かれた水に聲が映っていた
小聲と聲、細かい根のように聲は抱き合って
骨の環と骨の環と、樹上生活の景色が入って来た
遥か、水上の環を追って、泳いで行った、フカは小骨だ
三菱の標、聳える教会に似て、土木機械は会館を、破壊した
崖<<がけ>>、苺<<いちご>>と
細い聲が残って居て、気がつくと、村の小学校(ミッション・スクールの)、拝島の庭の蛇、其の蛇の聲
優しい日の射すある日の午後、私は古くなったアパートの
解体工事を、木製のモンに両肱をついて眺めていた
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