土曜の朝に39度4分という体温の計測をひと事のようにぼんやり眺めていた。長女は回復を顕著にその食欲にあらわして、アイスノンとかいったこちらの看病に回ることができるようになっていたが、同じ経験を時間差で共有する人間ができたのが、嬉しそうでもあった。この時は、妻も次女もまだ動き回って、こちら側のウイルスから逃げ回っていた。病院まで歩くことなどとてもできそうになかったので、長女の薬を服用し、カラダを分解されたまま夢の迷路をもがきながら眠る。夜には、薬がまっすぐにカラダに効いたのだろう、高熱がすとんと下がり、次女が希望した金目の煮付けを少しばかり食すこともできた。交代するみたいに、妻が発熱を訴え、次女を隔離して、それぞれ別の部屋に床をとった。
回復期というなんとも柔らかな時間をすごしているが、まだ依然として肉は骨から離れたままであるし、これ以上端末の前に座ることができそうにない。次女の発病が、こちらの完全な回復後であることを祈るばかり。