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major debut album FIX NEON 27,Feb released


特定の過去を幾度も振り返ると、同じ印象を辿ることになるが、この反復には過去を振り返る度に、揺るぎない印象を選択し固定する効果が確かにあって、これは捏造に近い作用となるおそれがある。トピックメイキングな出来事の印象のピークだけを掬ってそこだけ硬化させ、その出来事を支えた柔らかい部分を見えなくすることがあり、記憶を辿り直す時に気をつけないと、大切なものを見失う。

引き出しの奥にしまったままになっていたどうでもいいような紙切れやキーホルダーが、そうした記憶の殻を突如溶かすことがあり、あの時はそうではなかったと、逆説に近い出来事の真相を炙り出す瞬間に驚くことがある。日記などのテキストの類いは、時間を経過してもある程度出来事や印象を広範囲に記録している筈という認識も錯覚にすぎない。実は都度都合の良い記述しているだけであって、ある種の湿り気のようなものを、無邪気で我侭な記述という無意識が、隠蔽している可能性のほうが大きい。

出来事というよりも、世界に向けた意識を断片として方法を問わずに表象化させて手のひらに乗せ、「この時」が「あの時」になる際に、克明性を保持するよう努めることは、独りの人間の営みとしてだけではなく、全体のベーシックな倫理のシステムとして必要であると思われてならない。ここで勘違いされるのは、この努力と意欲が説明的に行われるわけではないということだ。説明的であることは、人間的な意識の動きの自由をこれまた固定させることになる。