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日々の日銭稼ぎの出鱈目な仕事がさすがに身に堪え(というよりこうした状況を好んでいるという自戒に悩み始めている)、眼精疲労の予防、改善、近視、夜間視力の低下の改善にと気づけば口にしていた生ブルーベリーは、都度効果を実感していた。季節柄店の棚から消えたのは仕方がない。眼精疲労に効くのはマルチビタミンとブルーベリーとカシスであるから、とにかくビタミン摂取をと考えたが、しばらく机から離れられない状態が続き、疲弊した瞼を押さえて湯槽でリフレッシュを試みても、文字が翳み、目覚めた時には克明に読み取れる大きさが、ホクロのようにまとまってしまい、諦めて横になることが度重なるようになった。コンビニで栄養ドリンクのボトルの裏の説明を読もうとするが、これも読み取れないので、手当たり次第数本を購入し、チョコラBBとアリナミンVを流し込んで睡眠をとった。

疲弊は睡眠と休養でさらりと流し落とせば良いが、一日を半分に割って、充分な休養を得る状況がなかなか簡単には生まれない。即座に反応する時代の要請に従うのも馬鹿馬鹿しいとわかっているのだが、それよりも私という個体の精神が過剰に照応を幇助するバイアスが膠着し、瞼を閉じることを忘れたドライアイのような精神状態の継続を知らずうちに習慣化してしまっている。このような生存の形態は良いわけがないので、自覚的に生存スタイルの刷新をしなければいけない。これには、業務自体も大いに関わってくることになる。労働の形態ではなく生存スタイルであることが肝心となるからだ。

若い女性がリフレッシュにと南の島に出かける欲望を、こちらはひと欠片も持ち合わせていないが、野田知佑(1938~)のようにカヌーで読書をし、読み終えた本を焚火で燃やして釣った魚を夕食とする贅沢を、生存のスタイルと考えたいと思うようになった。


塾帰りの娘とファーストキチンで待ち合わせ、来週から期末試験だからこれから九段下の図書館で勉強するというので、英語漬けの反復スタディーを約束させてあまり遅くならないようにと東西線で見送ってから、再び車内で丁度いいとポケットに入れた東京奇譚集 / 村上春樹(品川猿のみ2006書き下ろし、他4篇は2005)を捲ると、本当にオフィスからの往復に合わせたような速読を醸す短編集で、途中、秋葉原での買い物があったから尚のこと丁度読み終えたのだった。これは確か昨年の暮れに同じような速読の後、娘に渡していたと憶い出した。ただ、内容はすっかり記憶から抜け落ちていた。理由はいろいろと考えられるが、作家特有の文体の所謂軽さが、こちらの求めるものに符合しない時こうしたことはある。
展開やストーリーという筋などに興味を失せつつあるこちらがあり、辿る文節それ自体に磁力を見出せないと、放り出すようなことになる。村上春樹というと80年代の学生の頃を憶い出し、当時流行したビギ、ニコル、タケオキクチ等を羽織った床屋から出て来たばかりのような、出遅れた七五三を装う若者が並び、酷く滑稽な体裁で表面を繕った当時のサブカルチャーが累々と引き出されて浮かび、その中に間抜け面した私も、古くさいテープレコーダーから聞こえる自分の声のように顕われるので、あまり手にしないのだが、短編という流れの中で拾い上げていたのだった。
トイレに座ると、一度読み終えたけれど、どうも気になるゼーバルトの「土星の環」が読めるように置いてあり、デスクの横には、これも読み終えた立花隆を重ねたままにしてあり、カウチでは、アリステア・マクラウドを読む事にしているので、日々移動する腎臓のかたちをした石 / (東京奇譚集)で、人気の無い読書の為のカフェという設定に大いに影響され探してみようかという気になったが、最初に浮かんだのはカフェではなく芝公園だった。
地下鉄の車両で最近、青年が携帯ではなく単行本を手にしている姿をしばしば見かけるようになった。地上へ出る階段を歩きながら、ポケットの小さな本を触りながら、これ自体にあらゆることを見出せるのだから、なかなか大したものだと考えていた。

長女は大学で再びラクロスを始めたらしい。一度高校生の時、失明を危惧したほどの怪我をしているので、どうか気をつけてほしい。無理せずフィジカルに楽しみなさい。

どしてももう一度観たくなったのでクリック
assassination of jesse james / Andrew Dominik(1967~) DVD amazon

Assassination of Jesse James Movie Trailer

*assassination of jesse james / Andrew Dominikの目立たない隠されたような手法の新しさのひとつは、音響にある。音響空間を非常に観念的に構築している。そういう意味で、Der Himmel über Berlin / Wim Wendersへのオマージュともとれる。Original Music by Nick Cave(1957~),Warren Ellis / last.fm
there will be blood / Paul Thomas Anderson(1970~)と、作家の指紋が画面に広がらないという抑制力の点で、似ている。