Jiro SUGAWARA (1941~) 2010 / Osaka Art Univ.
好んでものをつくる人間を撮影するのは、おそらくそうでない人間と比較して、その佇まいに人間の時間が顕著に健やかに率直に表出化しているからであり、そうでないと、彼は何か秘匿し現在を取り繕う罪の装飾を気取るしかないからで、そうなると、ものを実直につくる人間ではないということになる。そのみつめはまるで長大な物語を受け取る体感に似ている。面白いのは、伝記という彼の出自、事実を知りたいということではなくて、その時間の蓄積の仕草、表情から、想像力を刺激されるメタフィクションの創出がある。
だから当然、人間よりもその表皮を目的とするファッション的なグラビアには目を背けることになり、自然レンズは、同じような方向にしか反応しなくなる。これも偏った傾向であるけれども仕方ない。こちらも嘘を気取るつもりはない。
個人的に小さく驚いた符号の、ライムストーンを磨く彫刻家の制作の現場を訪れて、人間の時間というものに出会って思うことが膨れた。
同じく彫刻家の二ノ宮女史の同伴で、大阪までの往復5時間の新幹線も、最後はiPodを聴きつつ疲労もありうつらうつらとしたけれども、同世代の美術系(オルタナティブネットワークだったけれども)であったから、退屈せずに興味深い話ができた。
戻って300ショットほどを現像すると、演繹的なロケ計画を見事に裏切るものばかりで、やはりその人間の営みの現場に感応照応する機知と判断の成熟の必要を感じつつ、朝まで続ける。
Jazz / Toni Morrison (1931~) ハヤカワepi文庫