Wie soll ein Mensch das ertragen / PHILIPP POISEL (1983~)
 片道2時間、往復160キロのひっそりと解放されたようなドライブを随分懐かしく感じていた。ラジオをやめ2007年のmemories CDをループさせていたので雨粒をワイパーで拭う帰り道では、朗読の一部を暗唱していた。丁度夕飯の時間には間に合ったが、用意された暖かい肉饂飩の器を見下ろして、何か文脈が違うなどと感じたものだ。ある意味で先験的な再生の場所である「屋根のない病院」軽井沢の春やで、Jinと11時に待ち合わせをしていたが、国道をひた走り祝日に挟まれた日のせいか所々混雑しており上田バイパスから浅間サンロードに入ったところで若干遅れると連絡していた。
 春やではびわ君の個展開催中であり、新作を見る。彼の作品の購入支払いの仕方に、現金、クレジットカードの下に「食物払い」と書かれおり、ペンギンのキャンバスと米やキュウリを天秤にかけて、一体どの程度の量にすれば良いか頭を悩ます作物をつくる人の顔が浮かぶのだった。
 このお店の下は今でも浅間の吹き出した岩だらけよというオーナーのミツイさんに、美味しい台湾料理の店、聚鑫楼(ジュイシンロウ)を教えて頂き、値段の割りにボリュームと味もよいランチをすませてから、Jinの案内で、追分宿へ移動し、骨董店、古本屋の追分コロニー、現在は閉じられ建物だけが辛うじて残っている旧脇本陣の油屋、バイクエンジンを解体して販売していたプロダクトデザイナーのショップなど、Jinの狩猟テリトリー、制作歩行、動脈の一部である追分の界隈を歩きながら、ランチまで頭の中を巡らせていた杙の幾つかが溶けるように朽ち、場所の時間変異をスイーツを食すように堪能する。
 Jinには、あの骨董店で是非、例の少々値が張った削りだしのスクリューを手にいれて、絶妙な形のデッサンなどして、回転して進む空間波動を制作へと還元していただきたいものだ。などと。



Surveillance (2008) / Jennifer Chambers Lynch (1968~) DVD */5
Smokin’ Aces 2: Assassins’ Ball (2010) / P.J. Pesce DVD */5
The Man from London / Tarr Bla (1955~)