憑依の理知
虞美人草の藤尾を殺す漱石という「清潔」に向けて、漱石の憑依者である水村美苗が、つくづく言及するくだりを肌寒くなった夜毎ベッドで辿っていた。漱石のレトリックが今でも充分に機能することよりも、漱石の目付で藤尾を言説化する水村の文学が百年の時間を充溢して流れることに気づき、時間経過の時空差異、場所の差異もが、普遍(留学したことのある者ならば一致する体感)と同様、むしろ明瞭になるのは、水村の漱石を二乗するレトリック(日本語という特異なスタンス)であると得心する。 |
虞美人草の藤尾を殺す漱石という「清潔」に向けて、漱石の憑依者である水村美苗が、つくづく言及するくだりを肌寒くなった夜毎ベッドで辿っていた。漱石のレトリックが今でも充分に機能することよりも、漱石の目付で藤尾を言説化する水村の文学が百年の時間を充溢して流れることに気づき、時間経過の時空差異、場所の差異もが、普遍(留学したことのある者ならば一致する体感)と同様、むしろ明瞭になるのは、水村の漱石を二乗するレトリック(日本語という特異なスタンス)であると得心する。 |