魂の行方

 執拗音型、執拗反復などと呼ぶオスティナート(ostinato)つまりリフが繰り返される時空にひきよせられながら、生成の器を持つ女性の魂への先天的で明け透けな投射を羨望して早朝の朝陽の中車を走らせた。土台魂の導火線しか持たないオスは、自身の魂にすら気づかずに生きて死ぬ場合もある。形骸の輪郭ばかりに気を使って根拠である自らの魂には無頓着な振る舞いが自分の日常も含めてあれこれ浮かび、メスには敵わないなどと思う。この項垂れがおそらくメスへと向かうそもそものはじまりなのだろう。

 あまりに凡庸なあるいは愚鈍なさざ波のような展開を一度押しやって別を手にし裏返していた燃焼のための習作(堀江敏幸)を再び湯槽で捲り始め、中盤からキャラの謂われがオスティナートの効果となって現れたか女性的な魂の信頼のようなものをオスである彼の文体に見いだしてふーんと声を漏らした。

 女ばかりの家族に慣れるより先にこちらはオスである形骸にしがみついていたのかもしれないと今になって思う。自身か父親かの蒙昧で教条的な口調ばかり想い出されては背中が凍り付く。そういえば父親はいつからか女たちに項垂れつつ微笑む術を習得していたのではなかったか。

 さて男の魂の行方を見定めるには、執拗反復しかなさそうだ。