plane 90-95

ぼくは、画布を絵画の為の支持体と考えていない。つまりぼくの作品は絵画ではないといってしまいたい。想像力を形にするための、シンプルな仕組みであり、粒子を平面に並べて置くという気の遠くなる反復を可能としてくれる、白く広がったわけのわからないフィールドのようなものと認識し、また定義することで、絵画ではない出来事を行い定着することができる。
炭化硅素、工業用研摩材であるのだが、これをふとしたきっかけで使いはじめて6年ほど経つ。そしてこの使用自体が、平面の作品となっていった。新しい名前や、言葉、観念に出会ってから、それらが肉体のように熟して慣れるには時間がかかるもので、ようやくこういった画布と粒子の扱いが、そのようになり、今回の発表という形をとる気持ちになった。だから、展示空間がトータルな意味でのイメージやコンセプトをアプローチするには不十分で、そういった方向では煮詰めていない。制作のメソッドを明らかにして、これまでを振り返り、これからの展開を予感したいということだ。酒蔵という時間が発酵して充ちているような空間にこちらのささやかな指先を並べることになる。「鉛と赤ん坊」のような斥力が働くことを祈りつつ。