ETHICAL GAZER
ありもしないことを捏造することに夢中になると、折角の時間を失ってしまう。馬鹿馬鹿しいことから手をひいて、新しくて瑞々しい現実感を実感したいからと、闇雲に外をぶらぶら歩きはじめていた。自身の在り方を探るような駆け引きが、この歩行で試されると、当初は背を曲げ、眉間を刻ませて、慎重に構えたかもしれない。やがて、どうでもよいような気持ちに乗って、カメラの重さも忘れた。撮影で取り立てて何かを大袈裟に示したいわけでもない。脇道をよたよたと入り込んで、ある時は記憶を捲り、ある時は不審な男の仕草で、路や軒先へとシャッターを押していた。時には雨の日に書斎に座り込んで、窓ばかりにレンズを向けていた。シャッターなんて、あれこれ複雑に考えて格好つけて自覚的に押すとつまらないと、意固地な気持ちが、また逆転して、逆様に手首を縛ったりした。出鱈目に遊びながら、日々の制作の記録も生まれた。娘たちのあどけなさも、そのまま残る気がしたものだ。ささやかな旅で、見慣れぬ街にいて、カメラを持つ特別の意味合いが失せているのに気付き、言い様のない切り取り方で、咳をするようにシャターをゆっくり押すような自身に、遠い呪縛感を抱くこともあった。 |