朝、薄暗いうちに目が醒めて、妻子の夢に忍び込まないように寝床を離れ居間を歩き回る。思うこともない。紅茶を啜ってから、制作室に立つ。陽のでるまでに片づけをしようとするが、きりがない。日々の汚れが、これも制作なのだと、簡単に放れるくらいになれないものだろうか。生真面目な悩みを強いて、意気地を意味にすりかえる時が多い。新しい大きな筆がほしいな。ピアノの曲を幾つも続けて流す。虫の音くらいにボリュームを絞っても、実によく響き渡る。