沙庭DM

 アートプロジェクト沙庭主宰ナカムラジン制作DMの校正版下が届く。自作のものと作品画像が異なり、二種類のDMを手にした場合、全く別の人間の個展と思われるかもしれない。ここ数年の平面を並べるにあたって(そうするしかなかった)、私には三種類の傾向があり、ひとつはドミノ片集積工作の観測。立体観測から離れた生活環境自体が齎すもの。更にこうした紆余曲折を経て、都度立ちのぼる現在性に従うもの。これら反復にて雷同的な蹌踉めく進捗を示すしかないわけだ。
 今回のほぼ三ヶ月しか準備期間がなかった唐突な個展招聘は、企画者側には理由があり、同時に遠くからこうした私の歩行的日々を眺めてくれていたことによるものだと理解している。例えば一年の準備期間を与えられれば、全く別の展開となっただろう。
 私は居を山に据えてから、所謂ホワイトキューブや美術館という、謂わば無菌室での他力本願な作品展開に首を傾げており、場所と作品について試行を重ねているが、今回の展開場所である「アートプロジェクト沙庭」が設置されている「油や」を、再開発の時点より知っていることもあり、避暑地軽井沢の隣の追分という希有な歴史を持つ特異性を感じつつ、私の現在作品制作で抱えつつある「エイジング」「併置」「欠損」という関心に、場所における開放軸を加えて、三回目となる今回、再び新たに見いだせればと考えている。
 但し、作品販売による運営を軸とするギャラリーであるので、作品売却されないとギャラリーは赤字となるので、私の個人主義に染まった反社会的な売れない作品展示となることを企画側は承知しながら招聘してくれたことに感謝しつつ、個人的には申し訳なく感じている。