堅ゆで卵

 卵からの連想もあった。

ハードボイルド(hardboiled)とは、元来は「堅ゆで卵」、つまり白身・黄身の両方ともしっかり凝固するまで茹でた鶏卵のこと。
転じて、感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す言葉となる。文芸用語としては、反道徳的・暴力的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいい、アーネスト・ヘミングウェイの作風などを指す。また、ミステリの分野のうち、従来の思索型の探偵に対して、行動的でハードボイルドな性格の探偵を登場させ、そういった探偵役の行動を描くことを主眼とした作風を表す用語として定着した。
主人公は軟弱な生き方を拒否するタイプが多いため、近年の日本作家の作風は冒険小説との境界が曖昧である。映画(主にハンフリー・ボガート)の影響から、トレンチコート(コートの中はスーツ)に身を包みソフト帽を被ったタフガイというイメージで語られることが多い。そういうイメージとしての「ハードボイルド」には、タバコの紫煙やバーボンなどの小道具、危機に陥った時の、それをものともしないような軽口も挙げられる。こうしたハードボイルド的イメージは完全に記号化されているため、この点を逆手に取ったパロディも多く存在し、「男性用のハーレクイン・ロマンス」(斎藤美奈子)という揶揄も否定できない面がある。
ーwiki
 写真画像を眺めて、ハードボイルドだなと言葉がでたものだった。でもこの場合、冷酷非情、精神的肉体的に強靭、妥協しない、客観的で簡潔などといった印象としての言葉ではなくて、ハードボイルドが齎す余韻のような「どうしようもなさ」、あるいは「無邪気」と「浅薄な恣意の敗北感」がミックスされたような、近寄ってはみたが、どうすることもできない、無力感に近い。絶望とは少し違う。
 この印象の獲得は、心地良いものであると同時に、好きな女に胸を両手でドンと突かれたような、唐突な拒絶、存在否定で嬲られるようでもあり、わたしにとっては、この渾然としたパラドクスの力が漲っている光景でないと、とうとう失われる光景となって、記憶から追い出すようにデータは削除される。おそらく、この心地よさは、介入の容赦のない有り様が明示されているから生じるのであり、安易な解釈などあっさり切り捨てられることに起因する。
 死語の感の強い言葉を使い回すつもりはないけれど、こちらのこうした心地に適合する言葉はないものかしら。ミステリーというと、胡散臭い恣意で固めた茶番の解釈っぽいから勿論却下。