竹ノ内から電話があり、水道の水は飲むなと指摘され、そこに特に海沿いは遮蔽物がないからやばいので逃げた方がよいと彼はつけ加えた。
仮に炉心溶融が起きれば、勿論北半球に影響はでるが、160マイル(254キロ)以内の都内は駄目だろうと。こちらもそんな気がしていた。蓄積値はメディアでは指摘されていないし、事実、放射線被爆の詳細はまだ明らかにされていないことが多い。現場で働く下請けの人々も酷い格好で時給30万とかで働かされているらしい。
長野に仕事ありますかねぇというので、お前は工学部にでも職を探せよと口からでまかせが出たが、さて本当にどうしようか。
余震ではない、別文脈の首都圏直下型も起きる確率は低くない。ここで起きれば逃げようがない。嘘のようなほんとの話のような連続多発壊滅を防ぐ手立てがないのだから仕方がない。
娘たちを連れて長野に逃げなさいと、重ねて指摘されて、お前はどうなんだとたずねると、毎日外出から帰る時に、コンプレッサーで身体を吹き飛ばしている。今水と紙コップが届きました。とのこと。原子炉を設計している知り合いに指摘されたのだという。水には、リサーチ不可能な物質が含まれているとのこと。時に15歳以下の子どもはいけない。
戻らないことも視野に入れて、自分自身の構造改革をはじめるか。
南半球に逃げればよさそうですね。シンガポールあたりでもいいかも。否、沖縄も大丈夫。北海道は東に移動していない。などと長電話をしてから、娘らに水道の水は飲むな。珈琲もとメールすると、
「東京はだいじょうぶなんじゃないの?」
という次女からレスがあり、さてどう答えればいいのか、と腕を組んだ。SFではない。残された人生がサヴァイバルになるわけだ。